バレンシア、太陽の下で | koroのいきあたりばっ旅:アメリカ大陸横断編

バレンシア、太陽の下で

2004年10月28日(木)—バレンシア


バレンシアのバスターミナルに着いたのは朝7時だった。まだ辺りは真っ暗である。やれやれようやくバレンシアに着いたか、と僕は思った。バスの揺れと体調のせいであまり気分はすっきりしなかったが、まぁこれは仕方がないだろう。


気分が落ち着くまで待合室の隣のカフェでやたらに濃いエスプレッソを飲む。飲んでいるとだんだん気分がすっきりしてきた。そして昨日予約したユースホステルに電話をかけて道順をきいた。


僕の旅はだいたいいつも行き当たりばったりだ。ホテルなんかも予約するのが面倒で、直前にならないとやらないか、気分が向かなければそのまま現地に行って探す。僕自身はホステルに泊まるのは最初はそれほど好きではなかった。安いのはいいけれど、シャワーとトイレはたいてい汚いし、同室の連中はうるさいという具合だからだ。しかしこういうバックパック旅行も、慣れてしまえばけっこう良いものである。道連れや話し相手もできるし。


しかし今回のホステルのレセプションの人の道の教え方が下手だった上に僕が道を間違えたのでぐるぐると一時間近くも街を歩き回ってしまい、ホステルに着いたときにはかなりぐったりしてしまった。しかもまだ部屋は空いていないと言われ、荷物だけ置いて街へ出た。


バレンシアという街は、正直に言って見所の少ないところである。中央市場と、ラ・レンファというイスラムのモスク以外には特に見るものはない。


市場は新鮮な野菜や果物や肉や魚でいっぱいで確かに楽しかった。おいしそうな葡萄があったので買って食べると、少し気分が良くなった。


気分が良くなったのでメトロに乗って、ビーチへ行く。実を言うとバレンシアに来たのは地中海の陽光をいっぱい浴びるためであった。それなら他の場所でもよさそうなものだけれど、バレンシアと言えばオレンジが有名である。オレンジ=地中海の陽光=バレンシア、という実に単純な方程式が僕の中で成立してしまったのだ。そこで、のこのこビーチに出かけていった。


びっくりするくらい広いビーチだった。がらんとして、人は少ない。青い海地中海だ。さすがに10月の末になって泳いでいる人はあまりいなかったけれど(それでも2,3人の酔狂な人々が泳いでいた, crazy)僕は上着を脱いでTシャツ一枚になって念願のひなたぼっこをした。


風は強かったが日差しも強く、気分は良かった。30分くらい太陽の光を浴びたあと、浜辺のタヴェルナで魚のフライを食べた。窓際の席から外を眺める。ビーチにはあまり人はいなかった。さすがにもう10月も終わりなのだから当然だろう。しかしきっとシーズン中は大勢の—きっとうんざりするくらいの—観光客とリゾート客でごったがえしていたのだろう。ともかく、気持ちのよい日光浴だった。


ホステルに戻って部屋に入ったのが4時近くで、疲れからそのまましばらく寝てしまった。昨夜あんまりよく寝ていなかったからだ。


同室の女の子が帰ってきたのが6時くらいで、それで目が覚めた。彼女がHi、と言ったので僕もHi、と言った。


彼女はカリフォルニア出身のアメリカ人だった。休みを利用してスペインに旅行に来たのだという。バルセロナに3日ほどいて、昨日ここに来て、明日コルドバに行くの。前3ヶ月ほどスペインで勉強していたとき、コルドバでホームステイしていたから、そのときのホストファミリーを訪ねるのよ。スペイン語?かなりしゃべれるわ(can speak pretty well, actually)。アクセントとか方言とかでよくわからないことはあるけれどね。


そういうような会話をした。


そのあと、僕は1人で近くのスーパーでパンとハムとチーズを買って、安上がりの夕食を食べた。安上がりでいいんだ、ふっ。どうせホステルに泊まっているほかの人だってたいしたもの食べてないんだから(たぶんね)。長く泊まっている人は別にして、だいたいみんな簡単なものしか食べていない。パンとりんごとか。今回のホステルではパスタを作っている一団がいたけれど。


ホステルのキッチンで簡単な夕食を食べていたのだが、隣のテーブルには若い—しかし僕よりは年上そうな—日本人が2人座っておしゃべりをしていた。僕は話しかけようか迷ったが、結局話しかけなかった。関西弁のアクセントだった。


その代わり、その隣のTV室で他の外国人旅行者と一緒にDVDを見た。ロバート・デ・ニーロの出てくるアメリカ映画(タイトル忘れた)とPhone Boothで、二つともなかなか面白かった。


2本見終わると11時半だったのでシャワーを浴びて寝ることにした。ケイト(というのがカリフォルニアの女の子の名前だった)ともう1人のジェロモニ(という、ブリティッシュ系の英語を話す白人の男)も寝るところだったので3人でベッドに入って電気を消した。


その直後に、3人のイタリア人の男のグループがわいわいとでかい声でしゃべりながら入ってきた。本当にでかい声なのだ。そして香水のきつい匂いがする。僕らが眠ろうとしているのにちっとも気にしていないようだ。・・・イタリア人