グラナダ2 | koroのいきあたりばっ旅:アメリカ大陸横断編

グラナダ2

10月27日(水)—グラナダ


スペインに来てから、まるで何かの法則ででもあるかのように、一日おきに晴れと雨の日が繰り返されている。


今日は朝から雨が降っては止み、降っては止み、を繰り返していた。昨日のうちにアルハンブラに行っておいてよかった、と僕は思った。あそこには太陽の光が絶対に必要だからだ。


まずホテルをチェックアウトして今夜のバス・チケットを買い、鉄道の駅に荷物を預けておいた。国鉄(RENFA)なんだけど、駅のたたずまいといい、遠くに山が見えるところといい、どことなく軽井沢みたいだ。ここは標高が600メートルくらいあるらしいので、意外に涼しい。


雨なのであまり気乗りはしなかったけれど他にやることもないので、グラナダの町をぶらぶら歩く。


昨夜も行ったアルバイシン(アラブ人街)にまた行く。イベリア半島というのは、そこかしこにアラブの文化が顔をのぞかせているところだけれど、ここは特にそれが感じられる。雨なのがつくづく残念だけれど、白い家々のテラスには南国っぽい花やツタがからまっていて、情緒たっぷりだ。道は入り組んでいて、迷路に迷い込んだ気もする。いいところだ、と僕は思った。僕が生まれた伊東の街もそうだけれど、僕は昔から袋小路とか狭い道とかのある場所が好きなのだ。


アルバイシンの上のほうにあるカフェで昼食をとったのは3時ごろで、雨が少し降っていた。


適当に入ったカフェだったのだけれど、料理がとてもおいしかった。本日の定食を食べたのだけれど、炒め野菜のパスタは野菜がシャキシャキしていてとてもおいしいし、カラマリのつけあわせのサラダも野菜が新鮮でおいしい。これでビールを飲んでも6ユーロというのはちょっと信じられない。丘の上にも魚屋があったけれど、ヨーロッパで北より南のほうが食材が豊かで新鮮だ。


満足してそこを出てまたゆっくりと街のほうへ戻り、疲れるとカフェに入って時間をつぶし、適当にぶらついた。


ぼんやりとしながら僕は様々なあてもない考えをめぐらした。


バスに乗り遅れたらしい1人の男が走ってバスに追いつこうとしたがバスの運転手は取り合わず、そのまま走っていった。男は悪態をついて、持っていたで—どうしてそんなものを持っていたのかは不明—バスの後ろ側を思いっきり叩いた。


大学のそばを通ると、サッカーをやっている大学生がいた。それを見ながら、僕はここ何年か、サッカーに深く関わった生活をしていたのだなぁと思った。


中学の頃は夏休みにも練習があるのが嫌だった。休みなんだから自分の好きなことをしてもいいんじゃないかと思ったが、ともかくクソ暑い中で練習をしていた。こう書いていくだけで、喉の渇きや汗の流れる感触が蘇ってくる。体が記憶しているのだ。炎天下で練習をしたあとは体中井の水分が抜けてしまって、もう何もする気が起きなかった。僕の夏休みはサッカーに始まってサッカーに終わった。


練習の無い日に、突然先輩に呼び出しをくらってサッカーをしたこともある。夕方で、僕はあまり行きたくはなかったけれど断るのも怖かったので、着替えて自転車に乗って中学校へ向かった。


校庭には何人かの先輩と何人かの同級生がいた。みんなで笑いあいながら、でもけっこう真剣に延々とミニゲームをやった。最後は三人対三人くらいのゲームになり、これで負けたほうがおしまい、ということにしても、負けたほうは必ず「もう一回!」と言うので、いつまでたってもゲームは終わらなかった。


午後10時ごろ、バスターミナルへ向かった。バレンシア行きの夜行バスが11時半に出るのだ。バスには中国人らしきカップルと日本人らしき30代の男とフランス人らしき人が2人乗っていて、あとはスペイン人のようだった。


僕の隣に座ったのはスペイン人のおばちゃんだった。雨のせいで濡れた靴を脱ぐと、そのおばちゃんは「ちっちっ」と言うようなことを言って口の前で指を横に振った。どうやら、バスの中で靴を脱いではだめだ、というようなことを言っているらしかった。そんな規則があるのかどうか疑問に思ったけれど、おとなしく従っておいた。


運転手がうるさいラジオを鳴らしているのと体調があまり良くなかったのとで僕はあまり眠れなかった。