10月23日(土)-マドリッド- | koroのいきあたりばっ旅:アメリカ大陸横断編

10月23日(土)-マドリッド-

飛行機の中から、ピレネー山脈らしきものが見えた。方向と地理からいって、まず間違いないはずだ。

そう高くはない山々のはずだが、やけにでこぼこがはっきりして見える。


ピレネー山脈を越えると、眼下の風景が一変してしまったことに気づいた。それまでは単調ないかにも西ヨーロッパの田舎的農村地帯だったのが、急に中央アジアにでも来たように赤茶けた大地に変ったのだ。なるほど、ナポレオンが「ピレネーを越えたらそこはアフリカだ」と言ったのもわかる気がする。ほどなくして、飛行機はマドリッド空港へ着いた。



 ブリュッセルは寒くて北風が吹いていたが、マドリッドは晴れて、気温は24℃くらいだという。たしかにここは南国だ。ターミナルの中から見える郊外の景色は、いわゆる一般的イメージの(フランスとかドイツとかの)ヨーロッパとはだいぶ違う。まず、景色が赤茶けた大地なのだ。これは新鮮で面白そうだ、と僕は思った。しかし一人旅だし、マドリッドは犯罪が多いと聞くから気を引き締めなければ、と僕は自分に言い聞かせた。
 

僕は空港のトイレに入り、財布の中からビザカードとパスポートナンバーを控えた紙切れを出して自分が今はいている靴下の中に入れた。もちろん盗まれないためだ。そんなの警戒しすぎだろ、と思うかもしれないけど、事前に読んだ外務省のホームページには「マドリッドでは首絞め強盗が多発していて、日本人観光客はターゲットになっている」と書いてあったのでびびった。「昨年だけで200人以上が被害にあっている」・・・かなり多いじゃないか!そんなにはっきり書かれても困る。


ヨーロッパに来てから犯罪(そのほとんどはスリや強盗だけど)が多いというのはどこに行ってもきくけれど、首絞めなんてきいたことない。首絞められて気絶させられたら、どんなに頑張っても身ぐるみはがされてしまうのは目に見えている。だからせめてこれだけはとられたくない、というものだけ靴下の中に隠した。現金はいくらか財布の中に入っているけれど、もうあとはとられてもしょうがない。それだけ隠してしまうととても気分が楽になった。

 空港からメトロで市内へ向かう。メトロはきれいでつかいやすそうだった。人々もいかにもラテン系で明るく、ファッションも明るくてどことなく騒々しいが悪い感じはしない。

 アトーチャ駅の近くの安宿(2泊で34ユーロ)に荷物を置いて、さっそく街へ出てみる。このあたりはマドリッドの中でも最もにぎやかな地域ではないみたいだが、活気にあふれ、おいしそうな食堂がいくつもあり、人々が通りにあふれていた。とりあえず腹が減ったので適当な食堂に入る。


スペイン語はまったくわからないが、英語がわかるウェイターがいたので助かった。カラマリ(イカのフライ)とビールを頼み、パンを食べる。テレビでレアル・マドリッドの試合をやっていたのでぼんやり眺める。けっこう大勢人が入っているが、一人でもぶらっと入れてしかも値段は高くなく、うまい。この店に限らず、まわりもそんな感じだった。いい感じだ。ベルギーなんかでちょっとレストランに、なんていうとTシャツにジーンズだと入りにくい雰囲気の所も多いし(もちろんそういうところばっかりじゃないけど)、値段もそれほどは安くない。だから僕はマドリッドの街のそういう気楽さが気に入った。


しかし勘定を払うときになって10ユーロちょっとしか持っていないことに気がついた。大きな金は宿においてきたのだ。しかもパンはサービスかと思っていたらしっかり料金に含まれていたので12ユーロ。金を取りに帰るのも面倒だったので11ユーロの有り金を全部置いて逃げるように出てきた。すまぬ。しょっぱなからこんなことで大丈夫かなぁと思いながら宿に帰って、スペイン語で何やら話しかけてきた隣の部屋のおじさんを追い払って、疲れていたのですぐに寝る。