バルセロナ(2)夜がはじまる | koroのいきあたりばっ旅:アメリカ大陸横断編

バルセロナ(2)夜がはじまる

2004年10月29日(金)―バルセロナ


(続き)

イスパニア広場から美術館への道は、水路と噴水で階段状に飾られていて美しい。僕が坂道を下っていった時にはちょうどあたりが暗くなるころだったので、その光景がよく見えた。僕は思わず足を止めた。


巨大な噴水ライトアップされているのだ。そして、僕が立ち止まって見ていると、音楽と共に水が様々な形で噴きだした。ライトの色も音楽にあわせてピンク、緑、青、赤と変わって幻想的に美しい。まわりにも僕と同じように「なんだなんだ」と足を止めてみている人が大勢いた。あるいはバルセロナ市民にとってはこんなの普通のことなのかもしれない。


思わず見とれていると、市の職員のような人が何かを配り始めた。僕もひとつもらってみたが、何なのかわからない。細長くて、中に何かが入っているようだけれど、スペイン語だけしか説明がないのでさっぱりわからない。


周りを見ると、人々はその袋をちぎって中の物に火をつけはじめた。花火だった。線香花火のように火がしぱしぱと飛ぶので僕の家族が「シパシパ」と呼んでいる花火だった。


僕も火をもらって花火につけた。広場の周りで、美しい噴水を囲んで人々がにこやかに笑いながら花火をしているのは、とても感動的な光景だった。いい風景だ、いいことだ、と僕はしみじみと思った。



ホステルに戻ると、1人同室者がいた。彼はジョンというオーストラリア人で、ここ一週間ばかりバルセロナにいるが、その前はポルトガルに一ヶ月ほどいたのだという。とても陽気で面白い男だった。どうもこの旅ではオーストラリア人の人とばかり会っている気がする。暇なのか?それともオーストラリア人というのはスペインに魅かれるのか?


彼としばらく話をし、少しだけ外に出てから戻ってみると、同室者が増えていた。2人の女の子は働いているベルギー人で、週末だけバルセロナに来ているのだという。一人の女の子は「モシモシ」という日本語だけを知っていた。なんだかおかしな言葉だけ知っているな、と思って「どうやって知ったの?」ときくと、「映画の中で」と彼女は答えた。それだけ知っててもどうかとは思うけど・・・。


もう1人男がいて、彼とはあとで話をしたのだけれど、カリフォルニア出身のアメリカ人だった。アメリカ人にしては割と物静かな男で、いつも彼女らしき女の子と一緒にいた。カップルでユースホステルに泊まるっていうのもあまり見ない話だけど。


そして急にうるさい三人組の女の子が入ってきた。と、急にジョンがそわそわした様子で彼女達にいろいろ話しかけていた。察するに、彼女達と仲良くなりたいらしい。彼女達はイタリア人で、英語はあまりしゃべれなかったがスペイン語はまあまあしゃべれるらしい。たぶん歳は僕と同じくらいだろうけれど、きゃぴきゃぴして、わりと可愛い女の子たちだった。


オーストラリア人のジョンは彼女達にタバコをすすめたり英語と片言のイタリア語とスペイン語で話をしたりしていた。僕はそれをにやにやしながら眺めていたが、そのうちに彼らが酒を飲みに行くと言うので僕もベルギー人の女の子たちと一緒に行くことにした。


イタリア人の女の子達が向かったのは小さな、洒落ているとはとても言えないバーだった。彼女達はそこの主人(ペルー人だという)と知り合いらしかった。僕はイタリア人三人組とオージーと一緒にアブセンティーをショットしたが、これはとてもきつい酒で、喉がひりひりした。味なんて全然わからん。イタリア人の女の子達は眼を白黒させている僕を見て笑っていた。


ベルギー人2人はクールにビールを飲み、それから他のところへ行くといって行ってしまった。僕ら五人はそこでしばらく酒を飲んでいた。イタリア人とオージーは3回くらいショットをしていた。大したものだな、と僕は思いながらビールを飲んだ。


そしてもう一軒のバーに行く頃にはみんなけっこう酔っ払っていた。僕も頭がぼんやりしていたが気持ち悪くはなかった。3時になるとそのバーも閉まったので僕らは外に出たけれど、女の子達がふらふらになっていたので(僕もだけど)少しそこらへんに座って休んでいくことにした。


通りには人は誰もいなかった。ジョンがタバコの火をつけ、「吸えよ」と言った。俺は吸わないんだ、とさっきは言って断ったが、なんとなく悪い気がして少しだけもらった。


なんだか不思議な感じがした。スペインに来て、知らない外人たちと一緒に酒を飲み、午前三時にタバコを吸って空を見上げたりなんかしている。俺何やってんだろ、と思った。二口くらいだけ吸って、ジョンにタバコを返した。10分くらいあとでふらふらしながら部屋に戻って、寝た。